仕事で"圧倒的成長"を目指すことは本当に幸せにならないのか?
TECHCAMPを運営している株式会社divの代表の方が書いた記事が話題になっている。
僕自身もこれを読んで「なるほどな」と感じる部分があったので自分の意見も交えて紹介したい。
記事の内容を大まかにまとめると、「幸せに働くには何をモチベーションにして仕事をするべきなのか」というテーマに沿って書かれている。
仕事は恐らく人生で最も多くの時間を占める。
その時間をいかに幸福に過ごせるかが、人生の幸福度を決めるといっても過言ではないだろう。
人生を幸せに過ごすためには、仕事を幸福にする必要がある。
仕事に対するモチベーションは3つに分けられる
イエール大学のエイミー准教授の研究によると、人が仕事をする動機は、「ジョブ」「キャリア」「コーリング」の3つカテゴリーがあるという。
①ジョブ(労働)
ジョブに属する人は仕事を単なる労働と考えている。働く動機は報酬。より良い報酬があればいつでも転職する。
②キャリア(成長の実感)
キャリアに属する人の働く動機は、「経歴」や「向上している」という実感。目の前の仕事をもっと良い何かへの踏み台と捉える。
③コーリング(仕事自体が価値)
コーリングに属する人の働く動機は「社会の役に立っている」「自分の仕事には意義がある」という実感。目の前の仕事に取り組むこと自体に価値を感じる。
3つのカテゴリーの中では、コーリングに属する人の幸福度が最も高く、質の高い仕事ができているという。
マックのアルバイトはジョブ。
大学生の成長系インターンはキャリア。
理念をもって本当に楽しく会社を経営している人などがコーリング。
記事には、勇気を持って「キャリア」という考え方を捨て、コーリングに属して働ける天職を探すことをおすすめしたい。と書かれていた。
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先日、高校の同窓会があったので参加してきた。
4割ぐらいの人達が就職する会社を決めていて、どんな仕事に就いたのかとか、なんでその仕事を選んだのかとか話を聴かせてもらった。
ゲームが大好きでゲーム会社に勤めエンジニアになった人、子供のころからの夢だった教員になった人、地元に居たいから市役所につとめた人、サーバーが大好きでサーバーエンジニアになった人、東大大学院に行きそのまま教授を目指している人。
彼らに共通するのは、自分が好きなこと、やりたいと思ったことに向かって全力で行動していくこと。
当然、彼らにも悩みがある。人間関係だとか、給料が安いだとか、上司が厳しいだとか。
そんな話題で盛り上がっている時に、僕はベンチャー企業に勤めているA君と話していた。
「給料は安いけどね、裁量の大きいことをやらせてもらえるよ。」
「やっぱりベンチャー入ると”圧倒的、成長”できるわけ?」
「まあ、その分野に関しては詳しくなるけど、ベンチャーだからって成長速度が極端に上がるわけじゃないよ。むしろ、下地のある大手の方が成長できるんじゃない?」
「じゃあなんでベンチャー入ったの?」
「ベンチャー企業に勤めるメリットは二つだけだよ。一つはその事業に関するノウハウを学べること。もう一つはIPOしたときお金が入ること。俺は、その事業のノウハウが欲しかったからベンチャーに入ったんだ。IPOの方はあんまり期待できないよ(笑)」
彼は、将来自分のサービスを始めるつもりらしい。今、そのためにベンチャーを選んで、ノウハウを吸収している。
自分の夢、本当にやりたい仕事をやるために、成長を目指しているのだ。
それだけに目標を絞り、自分の将来を決めている。
彼は本当に嬉しそうに自分の仕事について話してくれた。
成長は過程にすぎない
この話を聞いて、僕は成長はあくまでも手段であって目的じゃないなと感じた。
もともと、僕は人生の目標を”自分が成長すること”に定めていた。
自分が成長することで、満足感・達成感が生まれ、幸せになれるだろうと考えていた。
初めのうちは成長して高みを目指すのが楽しい。
今まで、時間をお金にかえるだけのバイトしかやった事がなかった自分は、成長を謳うインターンをして充実感を感じていた。
できないことができるようになれば、楽しくなるし、もっともっと成長したいと思うようになる。
僕が働いていた会社はとにかく”圧倒的成長”を押し出して人を募集していた。
当然、成長を目的に人が入ってくる。
彼らの意識は非常に高く、未知の知識に対して貪欲だ。
だが、先輩と飲んでいるときに、ぽろっとその先輩がこんな話をこぼした。
「俺、この会社を辞めようと思ってる。」
「…何でですか?この仕事が好きっていってたじゃないですか。」
「もう少し、ステップアップしようと思ってね。」
「先輩は、ステップアップして最終的にどんなことをするつもりなんですか?」
先輩はしばらく考え込んでこういった。
「自分の技術を磨いていくことが俺の目標だよ。それが楽しいんだ。」
先輩はとにかく自分のスキルアップに貪欲だった。
エンジニアにとって、転職はまったく珍しくもない。スキルアップを目指して別の会社へ、なんて話はしょっちゅう聞く。
だが、僕はここで疑問に思った。
20代ならばスキルアップをひたすら目指すのもまだ楽しめる。
自分にはまだ成長の余地があり、時間があると考えられるからだ。
だが40代、50代になったらどうなるのだろうか?
やがて、成長が止まり、周囲からの評価が気になり始める。
飲みの席などで、今や未来の話ではなく、自分の過去の苦労話や武勇伝ばかり話すようになり、自分が何者にもなれなかったことへの絶望したり、自己正当化のために批判的な態度をとるかもしれない。
成長することは悪いことではない。むしろ成長しない人間は退屈きわまりない。
だが、成長それ自体を目的にしていると、このような未来が待っている可能性がある。
成長はあくまでも、自分が本当にやりたいと思えることへの長い道にある過程なのだと感じる。
本当に好きだと思える仕事を探す
本当に自分が好きだと思える仕事に巡り合うのは難しい。
スティーブ・ジョブズは自分が愛する仕事を探すことの重要性について語っている。
仕事は人生の重要な位置を占める。
それに満足したければ、最高だと思える仕事をすることだ。
そして最高の仕事をしたければ、その仕事を愛することだ。
スティーブ・ジョブス
ジョブズはさらに、以下のように述べる。
自分の時間は限られている。だから、ドグマにとらわれてはいけない。
それは、他人の考え方につき合った結果にすぎない。
他人の雑音で、自分の心の声がかき消されないようにしなければいけない。
最も大事なのは自分の直観に従う勇気を持つことだ。
自分が本当にやりたいことを絞るのは勇気がいる
目標を設定することは、とても大事だけど、同時にとても怖いことだ。
それは年代問わずだが、特に10代20代は自分のやりたいことを決めきれないでいる。
自分には無限の可能性があり、まだ時間もある。そう思ってしまう。
失敗したらどうしよう、とか、目標が間違っていたらどうしよう、とか。そういった諸々の恐怖と戦うための勇気が、目標を立てる時には必要になる。
僕自身も失敗が怖くて、意図的に目標のレベルを下げて、自分が本当にやりたいことじゃないけど、まずまずな仕事をしてしまっている。
この恐怖は自分が生んでいるというよりも、ジョブズが言っていたような周囲の雑音から生まれていることが多い。
親の評価、友人の評判などが気になってしまう。
本当は、自分がやりたい仕事だけど安定してなくて給料が安いから親に反対されるとか。
だが、結局決断しなければいけないのは自分自身だ。
今日で死ぬとしたら、今日は本当にすべきことをするか?
この質問を毎日、鏡に映るの自分に問うてみて、Noが続くようなら今の生活を変える必要があるだろう。